2022年共通テスト物理

 

 2022年も共通テストが終わりました。今年の物理の共通テストはあえて言うならば’簡単’になったのではないかと思います。あとで説明しますが、私個人の感想としては、「物理基礎の問題かな?」とでも言いましょうか・・・。いやいや、別に、物理基礎っぽいのがダメと言いたいのではなく・・・。でもでも・・・というような、ある種もんにゃりとした気持ちになっております。

 とりあえずダイジェストで感想を並べてみましょう。

 

第1問

 センター試験の時から続くいつもの小問集合。ここにしか波と熱力学の問題はありませんでした(15点分)。波と熱力学の扱いが小さいのは、物理の各分野をまんべんなく勉強してきた受験生たちにとっては、その勉強の成果が出ることなく終わってしまったということになります。逆に、力学と電磁気学にヤマをはった受験生がかなり有利でした。こうした物理以外での点数の偏りは、全国の受験生がどれだけ勉強してきたかを測るテストの在り方としてはあまり相応しいものではないでしょう。問題の難易度としては、難しい問題はなく、どれも標準以下の難易度でした。

第2問

 力学の問題。この大問の前半は個人的には今回一番好きな問題でした(後述)。前半の問題が良い出来なのに対して、後半は易しすぎて、共通テストで出すほどではないでしょう。私が共通テストを作るなら、前述の偏りを補うように波か熱力学の問題を入れるのですが・・・。

 

第3問

 電磁気・・・ではあるのですが、実験のグラフを選ぶだけでほぼ終わってしまいます。式を立てる必要がほぼないのです。誘導起電力がイメージできる受験生にとっては簡単すぎる問題。

 

第4問

 原子物理の問題。丸々一問が、その単元の後の方の水素原子をテーマにした問題でした(途中ほんのすこしだけ円運動がありましたが)。水素原子というのは、受験生(特に現役の受験生)にとっては、原子物理という最後の分野の中でも最後に学ぶテーマです。コロナ禍で学習の進度がまちまちにならざるを得ない現役の受験生に配慮した気配がないのは残念です。問題の中身自体はどのような参考書にもあるような標準的かそれ以下の問題です。水素原子の半径・エネルギー準位までしっかり二次レベルまで演習していたGHS生はみなできていました。

 

 大体このような感じです。

今回一番いいな、と思った問題は大問2番の前半です。要旨は「Aさんがモノの動きについてある(間違った)仮説を立てた。それを聞いたBさんはAさんの説が間違いだと思い、その反証(それが間違っているという証拠)を探す」というものです。そのために、実験で気を付けるべきこと、この実験から何が言えるか・・・について問題になっていて、さながら自然科学のミニ研究のような面白さがあって、物理の思考を問う・・・という趣旨から見ると、とても良い問題でした。現実から理論を立て、反証し、また仮説を立て・・・というのを繰り返しながら特殊な理論から一般的な理論へと登っていくのが自然科学の思考です。

 「Aさんの仮説をグラフにすると・・・」という問題は、物理法則とは直接は関係ないけれども、仮説をグラフ化することで、見やすく、かつその法則が示す全体像を把握する、という物理的思考を試す問題としてよかったと思います。これは、公式を覚えているか・・・という話ではなく、自分で読解してグラフ化しなければいけない問題です。共通テストの「公式暗記じゃダメだよ」というメッセージが伝わってきます。

 

 全体の話に戻すと、去年の共通テストの解説では、「2021年の共通テストは式を立てなくてよい問題が多かった」と述べましたが、その傾向は強まっている印象を受けました。GHSの生徒たちも、イメージでサクサク'簡単'に解いていくことができたようで、時間が足りなかった、という人はほぼいませんでした。今年は数学がとても難しくなっていた関係上、易しめの物理で心が癒されたというコメントもありました。大問2以外は総じてサクサクできた、というのが生徒たちの感想です。

 

 講師の側から見ると、物理的イメージから、式をたて、それらの式を組み合わせて望む答えを出していく、という正統の物理と比較すると、どうしても「これって物理なの?」という肩透かし感は否めないのですが、もしかして、こうした正統の物理をするのは全部二次試験にまかせて、共通テストは文系仕様としての物理的イメージができていれば解ける物理基礎めいたテストになっていくのでしょうか・・・。それとも、去年70点という高得点の平均点をたたき出したのちに、その批判のせいなのか今年の平均点が50点と大難化した生物のように、物理も次の年にムチャクチャに大難化したりするのでしょうか・・・。私としてはどちらでも楽しみではあります。

 というのも、今後もイメージ重視(=数式軽視?)が続くのであれば、授業でもいつも言っている「イメージが大事だぞ」とますます言いやすくなりますし、難しくなるならなるで、イメージから式を立て、解いていくという訓練を普通に行っているGHS生は、難しくなるほどにシッカリと解いていきますので、ほかの受験生と差をつけるよいチャンスになるからです。

 

 それにしても、GHS生はあの数学のショックの中で、よく残りの理科科目に立ち向かってくれたと思います。これまでこちらの指導のエッセンスをくみ取って頑張ってくれた成果が、形式がどうでも解ける、という形で出てきていることを感じました。もちろん本当の本番はこれからの二次試験・私大入試なのですが、このまま勉強を続けていれば物理の実力は必ずついていきますから、残りの一か月半、存分に物理の勉強に没頭してほしいと思います。